遺言(自筆証書遺言)の書き方を解説
遺言は一般的に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種があります。
「自筆証書遺言」とは遺言者(遺言を書く人)が財産目録以外の全文を自筆で書く遺言書です。
ここでは無効にならない為の「自筆証書遺言」の書き方や注意点などのルールをなるべくわかりやすく解説します。
目次
自筆証書遺言のメリット
・要件さえ満たしていればいつでもどこでも自由に書くこと、書き直すことが出来る。
・ほとんど費用がかからず、様々な書類をそろえる必要も無い。
・遺言の内容を誰にも知られることが無い。
自筆証書遺言のデメリット
・要件を満たしていないと無効になる。
・遺言書が発見されない、紛失などの恐れがある。
・遺言書を隠匿、改ざんされる恐れがある。
・遺言書の検認の手続きが必要。
法務局での遺言書保管制度
2020年7月10日から法務局での遺言書保管制度が開始されました。この制度を利用することで上記のデメリットをほとんど解消することが可能な反面メリットの一部を失ってしまうとも言えます。しかし差し引いて考えても非常に有用な制度ですのでご利用を検討されてみることをお勧めいたします。▶法務局での遺言書保管制度
自筆証書遺言の要件
遺言書を無効とされないためには「遺言者の要件」と「遺言書の要件」の双方を満たしている必要があります。
遺言者の要件
・遺言作成時に15歳以上であること。(民法961条)
・遺言作成時に意思能力があること。(民法963条)
意思能力とは、自己の行為の結果を判断することができる能力のことで、遺言作成時に認知症などで意思能力が無かったと判断されると遺言が無効になってしまいます。
遺言書の要件(第968条)
①全文を自書(財産目録は自書でなくても可)
②日付を自書(西暦でも元号でも構いません)
③氏名を自書
④押印する(認印でも可)
⑤訂正箇所がある場合は規定通りに訂正する(規定通りでない訂正は、その訂正自体が無効とされますが遺言自体が無効になるわけではありません。)
自筆証書遺言の例と注意点
遺言書については①~⑤の要件を満たしていることが重要で、用紙、筆記用具などについての規定はありませんが、長期の保存に耐えるしっかりした物を使用するようにして下さい。
縦書きか横書きか、書式、文言などの規定もありません。例えば上記の例では、相続人の後ろに生年月日を括弧書きで記載しており、これは相続人を厳密に指定するためのものでありますが、生年月日の記載が無ければ誰のことを指定しているのかわからないという様なことは無いと思われます。その様な場合は生年月日の記載は必要ありません。
上記記入例の「4.上記に記載のない財産についてはすべて妻・杉並花子(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。」は、相続発生後に遺言に記載のない財産が発見されたような場合に遺産分割協議の手間や相続トラブルを無くす為のものです。もちろん妻以外を指定しても良いですし、そもそもこの4.のような指定をしないことも自由です。指定の無い場合、新たな相続財産は遺産分割協議を行うことになります。
上記記入例5.の遺言執行者の指定について。(民法1006条)
遺言執行者とは、遺言内容の実現の為に必要な一切の事務を行う者です。(民法1012条)
全ての相続に遺言執行者が必要なわけではありませんので、不要な場合は遺言執行者を指定しなくても構いません。▶遺言執行者とは?
遺留分への配慮を(民法1042条~)
遺留分とは法定相続人(兄弟姉妹以外)に最低限保証された遺産取得分です。詳しくは▶遺留分とは?
遺留分に満たない遺産しか取得できなかった者は、その不足分を請求(遺留分侵害額請求)することが出来ます。
遺留分を侵害する遺言内容であっても無効になるわけではありませんが特別の事情が無い限りは、遺留分の侵害が無いように配慮した遺言内容であることが望ましいと思います。
付言事項
財産の分配方法とは別に、遺言者から相続人への感謝の言葉やメッセージ、葬儀や納骨の方法などを「付言事項」として自由に書くことができます。ただし「付言事項」で書いた内容には法的な効力はありません。
次に要件の⑤に当たる訂正の仕方を解説します。
上記のように、まず間違った箇所を取り消し線で削除します。近くに正しい文字を書き加え、印を押します。
次に、余白に訂正した箇所を指定し何文字削除し、何文字追加した等を書きます。
この規定に従って訂正しない場合は、訂正が無効なだけで遺言全てが無効になるわけではありません。
何か所も訂正すると非常にわかりにくくなりますので書き直した方が良いかもしれません。
財産目録の添付
相続財産の種類が多い場合は財産目録を作成した方が解りやすいでしょう。
財産目録は自書する必要はありませんし書き方も決まっていませんので、パソコンで作った物や登記事項証明書、預金通帳のコピーなどをそのまま使うことも可能ですが、財産目録の用紙ごと(両面印刷の場合は両面とも)に遺言者の署名と押印が必要になります。
自書によらない財産目録は自書した遺言書とは別の用紙を用いる必要がありますのでご注意下さい。
遺言を書き終えた後
遺言書や財産目録が複数枚の場合
法的な決まりがあるわけでは無いのですが、ホチキス止めをしたうえで契印を押して下さい。
バラバラのままでは、万が一にも複数枚の遺言書についての一体性が認められず無効になる恐れがあります。
封筒に入れ封印する
封筒に入れず、裸のままの遺言書であっても無効になるわけではありませんが、封筒に入れ封印しておくことをお勧めします。
中身が遺言書であることがわかるように封筒の表には「遺言書」と書き、裏には「遺言者の死後、開封前に家庭裁判に提出し検認を受けて下さい。」という旨の文と「〇年〇月〇日」「遺言者〇〇〇〇」という日付、遺言者氏名を書いておくのが一般的です。
検認
検認(民法1004条)とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
遺言書発見から一連の検認の手続き終了までは2~3か月近くはかかると思っておくのが良いでしょう。
全て終了すると遺言書に「検認済証明書」を添付してもらえます。遺言の執行をするためには,遺言書に検認済証明書が付いていることが必要ですので、これで不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなどの手続きを進められます。
次の記事 »