公正証書遺言【作成方法・費用・必要な物】
公正証書遺言とは公正証書という形で残される遺言で、遺言者が公証人に遺言内容を伝え、公証人が遺言書を作成します。
公証人が遺言を遺言者と2人以上の証人に読み聞かせ間違いが無いことを確認し、各自が署名押印し完成となります。▶民法969条
ここでは、公正証書遺言の完成までを流れに沿ってなるべくわかりやすく解説していきます。
目次
公正証書遺言のメリット
・無効になる可能性がほとんど無い。
・紛失、偽造、変造、隠匿のおそれが無い。
・検認の必要が無い。
・文字を書くことが出来なくても遺言を残せる。
遺言は法律によって様々なルールが定められており、ルールに則っていない遺言は無効になってしまいますが、公証人に作成してもらうことにより無効な遺言になる可能性はほとんど無くなります。
遺言書の原本が公証役場に保管されるので、遺言書を紛失してしまった場合のリスクや、遺言書を偽造、変造、隠匿されるリスクも無くなります。
相続開始後の検認の手続きも不要で、すぐに遺言内容を執行することが出来ます。
遺言内容を公証人に口頭で伝えることによっても遺言を作成できるので、体が不自由で文字が書けない人でも遺言を残すことが可能です。
公正証書遺言のデメリット
・費用がかかる。
・遺言内容を他人に知られる。
・書き直すときも手続きが必要。
相続財産の価額に応じて費用がかかります。具体的な金額は
公証人と2人の証人には遺言内容を知られることになります。
公証人や公証役場で手配してもらった証人であれば今後一生関わることは無いでしょうし、守秘義務がありますので遺言内容を口外されることも無いのですが、それでも遺言内容を他人に知られることに抵抗を感じ公正証書での遺言はあきらめるという人もいらっしゃいます。
公正証書遺言を訂正、撤回する場合も規定の手続きをしなければなりません。
ただし、公正証書遺言を作成した後に自筆証書遺言(法的要件を満たしている物)を作成した場合、遺言内容が抵触する部分については前に作成した公正証書遺言が無効になり、後に作成した自筆証書遺言が有効となりますので実質的に訂正したことにはなります。
しかし、このような方法では検認も必要になりますし、混乱が生じる恐れもありますのでなるべくは公正証書遺言によって訂正をした方が良いでしょう。
公正証書遺言作成の流れ
①原案(メモ)の作成
②必要書類等の用意
③証人(2人)を依頼
④公証人と打ち合わせ
⑤公正証書遺言作成
大まかな流れは以上のようになります。個別にもう少し詳しく解説していきます。
①原案の作成
法定の様式などは気にしないで大丈夫です。遺言者ご自身がどのような財産を持っていて、それを誰にどのような割合で相続させ、また遺贈したいと考えているかを記して下さい。
箇条書き等で問題ありませんが、「だいたい」とか「〇〇くらい」のような漠然とした物では遺言になりませんので具体的な内容を記して下さい。
誰にどれだけ遺すかは遺言者の自由ですが、「遺留分」への配慮はしておいた方が良いでしょう。
「遺留分」とは、一定の相続人に最低限保障された相続分です。詳しくはこちらをご参考にして下さい。▶遺留分とは?
遺言というと「何々を誰々に相続させる」といった遺産の分割方法をイメージされる人が多いと思います。もちろんそれが主な内容になりますが、他にも記しておいた方が良い場合があったり、記しておくことも可能な事項があります。
遺言執行者の指定
遺言執行者とは、遺言内容の実現の為に必要な一切の事務を行う者です。▶遺言執行者とは?
全ての相続に遺言執行者が必要なわけではありませんので、不要な場合は遺言執行者を指定しなくても構いません。
付言事項
財産の分配方法とは別に、遺言者から相続人への感謝の言葉やメッセージ、葬儀や納骨の方法などを「付言事項」(ふげんじこう)として自由に書くことができます。ただし「付言事項」で書いた内容には法的な効力はありません。
その他にも、遺言に記されていない遺産が発見された場合はどうするか?など、遺言に記せる内容は様々です。
納得のいく遺言の作成や、相続時のトラブルのリスクを軽減するために専門家に相談してみることをお勧めします。
②必要書類等の用意
手続きをする公証役場によって多少異なる可能性があります。事前に公証役場に確認しておいて下さい。
・遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本
・相続人以外の人へ遺産を残す場合(遺贈)は、遺贈を受ける人(受遺者)の住民票
・不動産の登記事項証明書と固定資産納税通知書もしくは固定資産評価証明書
・預貯金の通帳もしくはそのコピー
・証人2人の住所、氏名、生年月日の分かる資料(運転免許証のコピー等)
・遺言執行者を指定する場合は、遺言執行者の住所、氏名、生年月日の分かる資料(運転免許証のコピー等)
・実印と印鑑証明書もしくは認印と運転免許証など本人確認のできる資料
③証人(2人)を依頼
公正証書遺言を作成する際には2人以上の証人の立会いが必要になります。
あらかじめ信用できる知人等にお願いしておいて下さい。
証人になるために特別な資格等は必要ありませんが、「欠格事由」といって証人になることが出来ない人の条件があります。▶民法974条
欠格事由
・未成年者
・推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
遺言者がご自身で証人を探すことが出来ない場合は公証役場で紹介してもらえますので相談してみて下さい。
公証役場で証人を紹介してもらった場合、証人1人につき謝礼として6000~1万円程度を支払うことが多いようです。
④公証人と打ち合わせ
①で作成した原案を公証人に伝えます。
原案を基に公証人が公正証書遺言(案)を作成してくれます。
修正したい箇所等があればそこを修正してもらい、公正証書遺言(案)が確定します。
公正証書遺言(案)が確定したら、実際に公証役場へ赴き公正証書遺言を作成する日時を決めます。
⑤公正証書遺言作成
作成当日、遺言者が公証人と証人2人の前で遺言内容を口頭で告げます。
公証人はその内容が判断能力のある遺言者の真意であることを確認したうえで、あらかじめ用意しておいた公正証書遺言の原本を遺言者と証人2人に読み聞かせ遺言の内容に間違いないことを確認してもらいます。
遺言内容に間違いが無ければ遺言者と証人2人が公正証書遺言の原本に署名、押印します。
最後に公証人も公正証書遺言の原本に署名、職員の押印をして公正証書遺言の完成となります。
公正証書遺言の作成費用
・公正証書遺言の作成費用(日本公証人連合会HPより)
(公証人手数料令第9条別表)
目的の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
具体的にに手数料を算出するには、相続財産の総額ではなく、相続人毎、相続額毎に計算します。
相続財産の総額が1億円以下のときは、1万1000円が加算されます。
例えば、相続財産総額が6000万円、これを妻に3000万円、長男に2000万円、次男に1000万円を相続させる遺言を作成する場合。
妻の相続財産3000万円→手数料29000円
長男の相続財産2000万円→手数料23000円
次男の相続財産1000万円→手数料17000円
29000円+23000円+17000円=69000円となり、相続財産が1億円以下なので更に11000円を加算し、合計80000円となります。
遺言書の枚数による加算(1枚ごとに250円)
公正証書遺言は4枚(法務省令で定める横書きの公正証書にあっては、3枚)を超えるときは1枚ごとに250円が加算されます。
遺言内容によって遺言書の枚数も変わってきます。公正証書遺言の場合は、原本に対して、正本、謄本も作成されますので遺言が1枚増えると正本分、謄本分の合計3枚増えることになります。
公証人に自宅、病院まで出張してもらう場合は、上記手数料が1,5倍になり、それ以外に公証人の日当と、現地までの交通費が掛かります。
祭祀承継者を遺言で指定する場合は、11,000円が加算されます。
遺言の撤回をする場合は、11、000円が加算されます。
その他では上記でも触れましたが、証人1人につき謝礼として6000~1万円程度を支払うことが多いようです。
まとめ
遺言って作っておいた方が良いのかな?と漠然とした考えはあってもなかなか実行には移せない、移そうと思ったけど何から手を付けたら良いのかわからない、という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな方はまず専門家に相談してみることをお勧めします。無料相談に応じてくれる事務所もたくさんあります。
遺言書作成サポートを扱ってる事務所が多すぎてどこに相談したら良いかわからない方へ大雑把な目安としまして、会社経営をされている等、法人の承継や相続争いが生じそうな複雑な事案は「弁護士」、不動産を多数所有しているなど相続税対策をしっかり行いたい方は「税理士」、上記の様な特別な事情の無い方は身近で安価な場合が多い「行政書士」という風に考えてもらうと良いと思います。
当事務所でも遺言・相続に関する無料相談サービスを行っておりますので、電話、メールにてお気軽にご連絡下さい。
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