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相続法解説(民法第5編) 第4章 相続の承認及び放棄 第3節 相続の放棄

938条【相続の放棄の方式】

相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

 

解説

相続放棄は、熟慮期間内に家庭裁判所に必要な手続きを行わなければなりません。

そのうえで、家庭裁判所の申述受理の審判を受けて相続放棄が成立します。

例えば、共同相続人間で「私は相続放棄します。」と意思表示をしただけでは相続放棄は認められ無いので注意が必要です。

 

 

 

939条【相続の放棄の効力】

相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

 

解説

相続放棄をした者は、相続開始時から、そもそも相続人ではなかったとみなされます。

ですから、相続放棄をした者と同順位の相続人がいない場合、相続権は次順位の者に移ります。(第1順位、直系卑属(子、孫など)第2順位、直系尊属(父母、祖父母など)第3順位、兄弟姉妹)

相続放棄は代襲原因では無いので、代襲相続は認められません。

 

 

 

※下記の第940条は2023年(令和5年)3月末日までの適用となります。

940条【相続の放棄をした者による管理】

1項 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるの

   と同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

2項 第645条、第646条、第650条第1項及び第2項並びに第918条第2項及び第3項の規定は、前項の場合について準用する。

 

解説

1項 相続放棄は、そもそも相続人ではなかったものとみなさられるので、権利義務は一切無いように思えますが、相続財産の管理義務

があります。

相続放棄をした者と同順位の相続人がいない場合、次順位の相続人に相続権が移ります。

その次順位の相続人が相続財産の管理を始められるまでは、相続放棄した者が、自分の財産と同じように注意をして相続財産の管理をし続けなければなりません。

2項 相続放棄をした者が相続財産の管理を継続する場合、645条【受任者による報告】、646条【受任者による受取物の引渡し等】、第650条【受任者による費用等の償還請求等】1項及び第2項並びに918条【相続財産の管理】2項及び第3項の規定に従う必要があります。

 

下記関連条文において、受任者→相続放棄者、委任者→相続を承認した相続人、委任事務→相続財産の管理と考えると理解しやすいと思います。

 

関連条文

645条【受任者による報告】

受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。

 

646条【受任者による受取物の引渡し等】

1項 受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。

2項 受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。

 

650条【受任者による費用等の償還請求等】

1項 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

2項 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。

 

918条【相続財産の管理】

2項 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。

3項 第27条から第29条【管理人の職務、管理人の権限、管理人の担保提供及び報酬】までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する

 

27条【管理人の職務】

1項 前2条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。

2項 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。

3項 前2項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。

 

28条【管理人の権限】

管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

 

29条【管理人の担保提供及び報酬】

1項 家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。

2項 家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。

 

103条【権限の定めのない代理人の権限】

権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。

一 保存行為

二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

 

 

 

相続法解説(民法第5編) 第5章 財産分離(第941条~第950条)

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