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相続法解説(民法第5編) 第8章 配偶者の居住の権利 第2節 配偶者短期居住権

第1037条【配偶者短期居住権】

1項 配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ

   当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈によ

   り取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一

   部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」

   という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第891条の規

   定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。

 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開

  始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日

 前号に掲げる場合以外の場合 第三項の申入れの日から六箇月を経過する日

2項 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨

   げてはならない。

3項 居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。

 

解説

1項 「配偶者短期居住権」とは被相続人の配偶者が相続開始時に被相続人が所有する建物に居住していた場合,遺産 分割協議が成立するまでか,被相続人が亡くなってから6か月経過するまでのどちらか遅い方までの期間、もしくはそれ以外で居住建物取得者が配偶者短期居住権の消滅の申入れをした日から6か月経過するまでは無償 で建物に住み続けることができる権利のことです。配偶者短期居住権は建物の一部にも成立することがあります。ただし、配偶者居住権を取得してる場合、第891条に規定される相続欠格事由に該当する場合、廃除によって相続権を失っているときは配偶者短期居住権は成立しません。

2項 配偶者短期居住権が成立した場合、その期間中は居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはなりません。

3項 被相続人から遺贈によって居住建物を取得した者や、配偶者が相続放棄をしたときに居住建物を取得した者は、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができます。

 

 

 

第1038条【配偶者による使用】

1項 配偶者(配偶者短期居住権を有する配偶者に限る。以下この節において同じ。)は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意を

   もって、居住建物の使用をしなければならない。

2項 配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができない。

3項 配偶者が前二項の規定に違反したときは、居住建物取得者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させ

   ることができる。

 

解説

1項 配偶者短期居住権を取得した配偶者は、他人の居住建物に住まわせてもらってるのだから、大切に注意を払ったうえ今まで通りに居住建物の使用をしなければなりません。

2項 配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができません。

3項 配偶者が第2項の規定に違反したときは、居住建物取得者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができます。

 

 

 

第1039条【配偶者居住権の取得による配偶者短期居住権の消滅】

配偶者が居住建物に係る配偶者居住権を取得したときは、配偶者短期居住権は、消滅する。

 

解説

配偶者が配偶者短期居住権を取得した後に、配偶者居住権も取得したときは、配偶者短期居住権は消滅します。

 

 

 

第1040条【居住建物の返還等】

1項 配偶者は、前条に規定する場合を除き、配偶者短期居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配

   偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物取得者は、配偶者短期居住権が消滅したことを理由としては、居住建

   物の返還を求めることができない。

2項 第599条第1項及び第2項並びに第621条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させた物がある居住建物又は

   相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する。

 

解説

1項 配偶者は、第1039条の規定以外で配偶者短期居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、その持分による使用収益する権利がありますので居住建物の返還を求めることはできません。

2項 配偶者短期居住権の消滅により居住建物の返還をしなければならない場合に、配偶者が相続の開始後に附属させた物があるとき、又は相続の開始後に生じた損傷があるときは、599条第1項及び第2項並びに第621条の規定を適用します。「借主」「賃借人」を「配偶者」と読み替えると理解しやすいと思います。

 

参考条文

第599条【借主による収去等】

1項 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。

2項 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。

第621条【賃借人の原状回復義務】

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

 

 

 

第1041条【使用貸借等の規定の準用】

第597条第3項、第600条、第616条の2、第1032条第2項、第1033条及び第1034条の規定は、配偶者短期居住権について準用する。

 

解説

配偶者短期居住権には第597条第3項、第600条、第616条の2、第1032条第2項、第1033条及び第1034条の規定が準用されます。

 

参考条文

第597条【期間満了等による使用貸借の終了】

3項 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。

 

第600条【損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限】

1項 契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。

2項 前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から1年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

 

第616条の2【賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了】

賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。

 

第1032条【配偶者による使用及び収益】

2項 配偶者居住権は、譲渡することができない。

 

第1033条【居住建物の修繕等】

1項 配偶者は、居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができる。

2項 居住建物の修繕が必要である場合において、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物の所有者は、その修繕をすることができる。

3項 居住建物が修繕を要するとき(第一項の規定により配偶者が自らその修繕をするときを除く。)、又は居住建物について権利を主張する者があるときは、配偶者は、居住建物の所有者に対し、遅滞なくその旨を通知しなければならない。ただし、居住建物の所有者が既にこれを知っているときは、この限りでない。

 

第1034条【居住建物の費用の負担】

1項 配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する。

2項 第583条第2項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。

 

第583条【買戻しの実行】

1項 売主は、第580条に規定する期間内に代金及び契約の費用を提供しなければ、買戻しをすることができない。

2項 買主又は転得者が不動産について費用を支出したときは、売主は、第196条の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、有益費については、裁判所は、売主の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

 

第196条【占有者による費用の償還請求】

1項 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。

2項 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

 

 

 

相続法解説(民法第5編) 第9章 遺留分(第1042条~第1049条)

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