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杉並区で雀荘開業手続きを代行しました。(前編)

令和6年6月初旬

個人様より杉並区の阿佐ヶ谷駅周辺で雀荘の開業に必要な手続きを代行してほしいとのご依頼をいただきました。

雀荘を営業するためには「風俗営業4号許可」を取得する必要があります。

参考リンク雀荘を開業するために必要な許可

 

 

 

既に物件は契約済みということでしたので「保全対象施設」についての確認をしたところ、ご本人はあまり「保全対象施設」についてよくわからないまま物件を契約してしまったという話でした。

参考リンク風俗営業の保全対象施設

 

 

簡単に言うと「保全対象施設」とは学校、保育所、病院、図書館、児童福祉施設などのことで、営業所から一定の範囲内に「保全対象施設」があると風俗営業許可は取れないというルールがあります。

 

このルールを知らずに物件を契約してしまい、その場所では風俗営業の許可を取る事は出来ないというケースが稀にあります。

風俗営業の許可を取ろうとお考えの方は物件を契約する前に「保全対象施設」の調査をすることを強くお勧めいたします。

 

 

嫌な予感をしつつ、営業所の住所を教えていただきグーグルマップで調べたところ近くに保育所があることが判明しました。

この営業所は商業地域でしたので保育所から50m離れていなければなりませんがグーグルマップでの距離測定では営業所のおよそ北側半分は50m離れていますが、南側半分は50mの範囲に入ってしまっています。

 

営業所全体が「保全対象施設」から一定の範囲に入ってしまっていれば、そこでは風俗営業を行うことはできませんが、今回のように営業所の一部は「保全対象施設」の範囲外というような場合は、この範囲外の部分だけでなら風俗営業を行うことは可能です。

 

 

 

上画像の赤いラインが保育所から50mのラインでこのラインの右側は「保全対象施設」から一定の範囲外になりますので風俗営業を行うことは可能です。

 

ただし、その為にはいくつかのハードルをクリアしなくてはならず多くの費用、時間、手続きを要します。

警察署へ何度も足を運び、警視庁の担当者とも確認を繰り返しつつ進めて行きます。

 

 

 

 

まずは保育所から50mのラインを確定させる

先程記載した図面の赤いラインは地図上で計測した50mのラインになります。

しかしこれは誤差がある可能性が高く信頼できるものではありません。

 

そのため、測量の専門家の実測に基づく正確な50mのラインを記した図面を作成してもらう必要があります。

 

今回のようなケースに限ったことではなく、例えば地図上での計測で営業所と「保全対象施設」の距離が50m以上51m未満という場合には、地図上の計測では1m程度の誤差は生じる恐れがありますので、実際には49.5mしか距離が無いという可能性もあり、測量の専門家の実装に基づく図面の提出を求められることがあります。

 

 

実測を測量の専門家である土地家屋調査士事務所へ依頼いたしました。

実は私も測量士補と土地家屋調査士の試験に合格しており(どちらも未登録)最低限の知識は持ってましたので、今回の実測作業がなかなか困難だろうということは感じてました。

 

見積もりをお願いした時の先方様の返信にも「今回の建物につきましては、建物間の隙間があまりなく、また裏手が商店街となっているため、見通しがきかず、商店やアーケード鉄柱などの障害物が多くあることで、建物裏手側を測量する為には、通常よりも大きな範囲で測量をする必要があります。

このため、機械を設置する「機械点」を8点以上必要になるかと想定し、各点をつないで測量をしていくことになります。」

とありました。

 

この「機械点」の設置数により費用は変わってきます。

「機械点」の設置数が少ない場合でも20万円程度はかかると思いますが、今回は8点とのことでしたので40万円近くかかりました。

 

専門家が3人がかりで高価な機械を使い現場作業だけでも2日かかってましたのでいかに大変な作業かがわかります。

申請者様にとっても大変な出費と時間のロスになってしまいます。

 

測量事務所のスケジュール次第ではすぐに作業をお願いできないような場合もありますし、今回はすぐに来ていただけて非常に助かりましたがそれでも4日はかかってしまっています。

 

 

そして作って頂いた図面(加工済み)の一部がこちらになります。

 

 

 

これで「保全対象施設」から正確な50mのラインが確定しましたので、このラインより右側は「保全対象施設」から一定の範囲外となりますのでこちらでは風俗営業を行うことが可能となりますが、

ラインより右側に雀卓を配置しラインを超えないように営業すればよい。などという簡単な話ではありません。

 

 

 

ラインの右側にラインを左側に超えないように壁を設置し右側と左側とをきっちり区分けする必要があります。

この壁も天井までキッチリと隙間なく設置しなくてはなりません。

 

 

また風営法には騒音や振動についての規制がありますのでこちらについても配慮した壁でなくてはなりません。

 

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)

(騒音及び振動の規制)
第15条 風俗営業者は、営業所周辺において、政令で定めるところにより、都道府県の条例で定める数値以上の騒音又は振動(人声その他その営業活動に伴う騒音又は振動に限る。)が生じないように、その営業を営まなければならない。

 

 

 

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令

(風俗営業に係る騒音及び振動の規制に関する条例の基準等)
第11条 法第十五条の規定に基づく条例を定める場合における同条の風俗営業者に係る騒音に係る数値は、次の表の上欄に掲げる地域ごとに、同表の下欄に掲げる時間の区分に応じ、それぞれ同欄に定める数値を超えない範囲内において定めるものとする。

地域 数値
昼間 夜間 深夜
一 住居集合地域その他の地域で、良好な風俗環境を保全するため、特に静穏を保持する必要があるものとして都道府県の条例で定めるもの 55デシベル 50デシベル 45デシベル
二 商店の集合している地域その他の地域で、当該地域における風俗環境を悪化させないため、著しい騒音の発生を防止する必要があるものとして都道府県の条例で定めるもの 65デシベル 60デシベル 55デシベル
三 一及び二に掲げる地域以外の地域 60デシベル 55デシベル 50デシベル
備考
一 「昼間」とは、午前六時後午後六時前の時間をいう。
二 「夜間」とは、午後六時から翌日の午前零時前の時間をいう。

 

東京都の場合は用途地域や時間帯にもよりますが騒音や振動がおおよそ55デシベルを超えないようにする必要があります。

 

 

 

 

さらに、本来1室の部屋だったものを壁により2部屋に区分けするために、照明機器や火災警報器などの配置にも不都合が生じる場合があり、その時は配置場所を移動する必要が生じてしまいます。

 

 

これらの壁の設置に関する作業にも費用や時間がかかってしまいます。

今回は諸々の手続きで2週間近くの時間と約30万円の費用がかかりました。

 

後編へ続く

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